むかしばなし「絵姿女房」

「絵姿女房」という昔話を覚えていますか?

・・・

むかしむかし、あるところに。

畑仕事をしている穏やかな性格の男がおりました。

男のもとに、それはもう見目麗しい女が嫁に来て、二人は仲良く暮らし始めました。

仲が良いのはいいのですが、男は美しい妻をずっとずーっと見ていたくて、仕事に行かず家にいるようになりました。

 夫が仕事に行かないのは困ります。

そこで女は自分の顔を紙に描いて男に渡しました。

「この絵を見ればいつでも私と一緒ですよ」

男はその絵を持って畑に向い、仕事の合間に絵を…いえ、絵を見る合間に仕事をするようになりました。

ある日いつものように畑で絵を見ていたら、強風が吹き、あっと思った時にはもう飛ばされて…

絵は、殿様の住む城に舞い込みます。

殿様は、描かれている美しい女に一目惚れ。

この絵の女を探せ〜!と家来たちに命じました。

家来たちは村中を探しに探し、いよいよ女を見つけます。

平和に暮らしていた二人でしたが、命令には逆えず、泣く泣く別れ別れに。

家を出るとき、妻は男に小さな袋を渡します。

袋には桃の種が入っていました。

「この種をまいて、実がなったら、桃をお城に売りに来て」

悲しみに暮れながらも、男は女の言葉通り種を畑にまき、木を育てました。

木は成長し、3年の月日が過ぎた頃、たくさんの実がなりました。

Peach

男は桃を籠に入れ、背負って城に向かい歩き出します。

城では、女は殿様の奥方として暮らしていました。

この3年、女は一度も笑ったことがありません。

殿様は奥方が笑わないことを気にしていました。

「桃〜桃〜美味しい桃はいらんかね〜」

外から桃売りの声が聞こえてきます。

女はその声に耳を澄ませます。

「桃〜桃〜美味しい桃はいらんかね〜」

女の目が輝きます。

様子に気づいた殿様。

ん?桃売りが面白いのだろうか?

「桃〜桃〜いちばん美味しい桃〜」

女の顔がほころびます。

奥方が笑った!

殿様の目も輝き、桃売りを城に招き入れました。

再会した二人はそっと目と目を交わします。

「桃〜桃〜いちばん美味しい桃〜」

うふふ

奥方が笑っている!

わたしの横で初めて笑っているぞ!

殿様は奥方にもっと笑ってほしくて。

自分にも笑顔を向けてほしくて。

桃売りと衣装の交換をします。

「桃〜桃〜」

桃売りの真似をします。

うふふふふ

嬉しくなった殿様は、歩き回ります。

「いちばん美味しい桃〜」

「桃〜桃〜」

気付いたら城の外まで出てしまっていました。

桃売り姿の殿様は誰にも気づいてもらえません。

「中に入れろ!」と叫んでも門番に追い払われ、もう城に戻ることはできませんでした。

城では男と妻が仲良く暮らしましたとさ。

・・・・・

河合隼雄さんの本「昔話の深層」を読んでいたら、「絵姿女房」のエピソードが載っていて、子供の頃アニメで見たっ!と急に存在を思い出しました。

浮世絵ちっくな似顔絵だったような?
検索して改めて「まんが日本昔ばなし」を確認。
そうそうこの絵、と懐かしくもあり、昔話を新鮮に感じたので自分でもあらすじを書いてみました。

アニメは桃バージョン、「昔話の深層」では門松バージョンでした。
離れ離れになる夫に「門松を売りに年末になったら城に来てください」と女は言います。
桃なんて仮の子どものようだし、門松はなに?
時間を要すことは印象的、この女性ってすごいな〜

河合隼雄先生いわく絵姿の女性はアニマだとか。
(アニマは男性の内なる女性像)
(アニムスは女性の内なる男性像)

アニマの引きおこす価値の顚倒による危険性を、わが国の「絵姿女房」の話はみごとに描き出している。
「昔話の深層」河合隼雄(1977年)より

衣装が違ったら認識されないのは昔話あるあるですね。

登場人物は別個人ということではなく、皆人間の一側面、統合される存在として無意識に還っていく…そんな感想も持ちました。

それはそれとして、今回は奥方の笑顔を喜んだ殿様に感情移入して、なんだか切なくなりましたとさ。。 

 

西洋との対比として、日本の昔話や神話も少し紹介されています